※この解説記事は内科医の監修の下、制作しています(監修:上條 壽一、医師)。

ノロウイルスは、感染すると激しい下痢や嘔吐が1〜2日程度続くため、仕事や家庭生活に大きな支障をきたします。また症状がなくても感染が分かれば、食品工場で働く方や介護施設の調理師、学校給食の調理員の方は、何日も調理などの仕事ができなくなるため、働く方やその家族にとっても深刻な事態となります。

ここでは、感染対策、もしかかってしまった場合の対処法や検査方法について解説します。

なお、食品工場で働く方、保育園・介護施設の調理師の方、学校給食の調理員の方などは、感染の疑いが少しでもある場合(下痢の症状があった、家族がノロにかかった、感染者と接触する機会があったなど)は症状のあるなしにかかわらず、ノロウイルス検査を行うことが一般的になりつつあります。それも、病院などの簡易検査(イムノクロマト)ではなく、感度の高い遺伝子検査(リアルタイムRT-PCR法など)を受けることが基本。必要に応じ、衛生管理責任者、施設責任者や上司に確認してください。簡易検査(イムノクロマト)を病院でうける場合、検査感度が低いため、実際は陽性であるにもかかわらず陰性の判定を受ける場合があります。

ノロウイルスとは?

とても小さなウイルスです。大腸菌やサルモネラ、ブドウ球菌などの菌も1mmの1000分の1程度と小さいのですが、ウイルスはそんな菌よりもさらに小さく、そんなウイルスの中でもノロウイルスはとりわけ小さいのです。Norovirus、ノロウィルスなどとも表記されます。

ノロウイルスの小ささはトップクラス!

ノロウイルスの小ささはトップクラス!

非常に小さいウイルスということもあり、接触感染(人と人、トイレ、ドアノブ、手すり、ちり埃など)、食事を介した感染、飛沫感染などの感染経路で簡単に蔓延してしまいます。

ノロウイルスの居場所・感染経路

このウイルスの居場所はとくにありませんが、あえて言うなら、人の消化管、川、河口付近の二枚貝の器官のなかです。そのうち、増殖できる場所は人間の腸管だけです。O157はウシの腸管などに生息し、サルモネラはニワトリの腸管などに生息するのでそこが居場所と言えますが、ノロウイルスは生物的・地理的環境をまたいで、人の腸→下水→川→海→二枚貝→人というサイクルで循環しています。冬になり、人間が二枚貝を扱ったり喫食する機会が増えるにつれてノロウイルスも蔓延しはじめます。

ノロウイルスは小腸で増える

ノロウイルスは小腸で増える

 

なぜ二枚貝がノロウイルスを持っているのですか?

二枚貝は海水を吸ってその中に含まれるプランクトンをこしとって食べます。牡蠣だと1日約200リットル、アサリだと一日24リットルの海水をろ過します。200リットルといえば、ちょうどお風呂一杯分に相当します。

下水の影響のある河口などの海域にはノロウイルスが浮遊しているので、カキたちは意図せずウイルスを体に溜め込んでいきます。これが牡蠣などがこのウイルスを持っている理由です。

ちなみにサザエなどの巻貝はろ過ではなく摂食(海草を食べる)なので、二枚貝のようにウイルスを体に溜め込むことはあまりなく、ノロ感染のリスクはゼロとは言えないものの、安全と予想されます。実際、巻貝によるノロウイルスの食中毒事例もほとんど報告されていません。

ウイルスを溜めうる二枚貝は牡蠣だけではなく、アサリ、ハマグリ、タイラギ、アカガイ、シジミなども知られています。牡蠣以外は生食に供されることはあまりないのですが、調理器具を介してサラダや刺身など他の食品を汚染してしまう危険性が最近注目されています。

二枚貝はその身全体にウイルスをもっているわけではなく、主に中腸腺という臓器に溜められます。取り込んだウイルスは貝柱などには分布しないと言われています。

貝を食べるとき、何に気をつけるべきか?

ご家庭で二枚貝等ノロウイルス汚染のおそれのある食品を扱うことも多いかと思いますが、シジミやアサリなど加熱して食べる貝は心配する必要はありません。85℃~90℃で90秒間以上加熱してください。

ただし、調理で使った器具などにはノロウイルスが付着している可能性があります。調理後は器具の熱湯消毒や塩素消毒(下で説明)を行ってください。

生食用カキを食べてノロウイルスに感染する場合がありますが、生で食べることがない「加熱用カキ」にもリスクはあります。加熱用牡蠣を調理中に調理器具や手指を介してノロウイルスの二次汚染が起こり、食中毒につながるケースもあります。

調理過程でのノロウイルス対策が大切です。

なぜ海水にノロウイルスがいるんですか?

原因は人の下水です。下水にはノロウイルスが含まれ、それが川を通って海に到着します。ノロウイルスが流行する冬はとくに川や河口に多く含まれますが、夏も下水や川から検出されます。
下水処理場でノロウイルスは消えると思われがちですが、除去しきれません。99.5%以上*除去します。しかし、たとえ99.9%除去したとしても、はじめに1Lあたり1千万個いれば、1万個残ることになります。そして、この値は実際にありうる濃度です*。
このような理由で川や海にはノロウイルスがいます。もし除去率が100%まで向上すればノロウイルスの問題は大幅に対策が進むでしょう。下水処理場におけるウイルスの処理は研究が進められているところですが、今はまだこれが限界です。

*下水道におけるウイルス対策に関する調査委員会報告書より

『生食用カキ』と『加熱用カキ』の違いは鮮度ですか?

シーズンになるとスーパーには「生食用カキ」と「加熱用カキ」が並んでいます。この違いは鮮度だと思われる方もいると思いますが、実は鮮度ではありません。この違いは、海域や菌数や洗浄方法等です。以下のポイントがクリアされると、生食用カキとして認められます。

  • きれいな海域か(河口などから離れていて、下水の影響がない海域)
  • 水揚げ後よく洗浄されたか(砂だし、洗浄、殺菌など)
  • カキ剥き身の菌数(細菌数、大腸菌数、腸炎ビブリオ数) など

したがって、加熱用カキに比べて生食用カキは安全です。しかし一方で、生食用カキからノロウイルスが検出されることもあるのも事実です。だから生カキを食べた後にノロウイルス胃腸炎を発症する人がいます*

そのような背景もあり、食品会社によっては、調理者が就職・入社する際に「生牡蠣は食べない」と誓約するところもあります。

*安心して生牡蠣を喫食できる地域、産地も多くあります。自主検査を毎月行い、ノロウイルスがシーズンを通じて全く検出されない産地も多くあります。

ノロウイルスの潜伏期間

感染してから症状が現れるまでの時間(潜伏期間)はおよそ24~48時間です。

ノロウイルスの症状・嘔吐・下痢について

症状には下痢、嘔吐、腹痛、発熱などがあります。注意点としては吐き気が突発的に襲ってくることです。突然なので、トイレにいく余裕もなく、ベッドや着ている服・床などに吐いてしまうことになります。その場合、汚染が拡大し、看病してくれるご家族にも感染を拡大させてしまう原因となります。

子供・幼児の嘔吐、お年寄りの嘔吐に注意

ノロウイルスそのものによる死亡例はほとんどないですが、嘔吐による窒息や誤飲性肺炎によって乳幼児や高齢者が亡くなるケースがまれにあるため、注意が必要です。

ノロウイルスの診断の現状、検査方法

嘔吐、下痢の症状があった場合は十分に休養し、医療機関を受診する必要があります。また、家族にそのような症状の者がいた場合、職場によってはそれを報告する必要もあります(調理者など)。

病院や検査機関で受けられる検査方法には以下の種類があります。本人の職種や仕事内容によって適切に検査方法を選ぶ必要があります。
こちらの記事もご参考下さい↓
ノロウイルスの検査はどこでやるの?費用や日数は?

 ノロウイルスの検査の種類
種類 名称 感度 判定時間
抗原反応 イムノクロマト法 数十分
ELISA法
遺伝子検査 RT-PCR法 1日~7日
リアルタイムRT-PCR法 1日~7日
RT-nestedPCR法 1日~7日

※遺伝子検出の判定時間は検査機関によって異なります。

まず検査の原理で2つに分けられます。抗原反応と遺伝子検出です。抗原反応はウイルスの殻のたんぱく質を検出することでノロウイルスを検出します。遺伝子検査はノロウイルスの遺伝子をターゲットにして検出する方法で、検査工程でノロのDNA(正確にはRNAを逆転写したもの)を100万倍に増幅するため、ノロウイルスの量が少なくても検出できます。

病院によってはその場で簡易検査をしてくれる場合がありますが、これは主にイムノクロマト法で行います(遺伝子検査ですとその場では結果は出ません)。イムノクロマト法は短時間で判定できるメリットがある反面、感度が低く、見逃しのデメリットがあります。調理者がノロウイルスに感染した場合、療養ののち、この検査で陰性(ノロウイルスを持っていない)と判定されても職場復帰することはできません。実際にはノロウイルスを排出しているのに「陰性」(ノロウイルスを持っていない)と判定されてしまうケースも多くあるからです。

調理、介護、保育などに関わる人は遺伝子検査で陰性となることが必要になります。大量調理マニュアル(学校給食など大量に調理を行う調理者のためのマニュアル)でも以下のように記述されています。

「ノロウイルスを原因とする感染性疾患による症状と診断された調理従事者等は、リアルタイムPCR法等の高感度の検便検査においてノロウイルスを保有していないことが確認されるまでの間、食品に直接触れる調理作業を控えるなど適切な処置をとることが望ましい」

出典 大量調理施設衛生管理マニュアル (改正:平成28年10月6日 生食発1006第1号)

このようにイムノクロマト法による判定は、ウイルス排出が多いと思われる患者に対して陽性を確かめる検査の色が濃く、その判定結果は診断補助として位置づけられています。

本来ならば病院でお手軽に遺伝子検査が実施されるのが理想ですが、検査費用が高く、時間もかかり、また保険が適応されないこともあり、なかなか遺伝子検査まで実施されるのはまれです。このような事情から、ノロウイルスが疑われる症状、嘔吐や下痢があったとしても、ノロウイルスと診断されることは少なく、「ウイルス性胃腸炎です」とか「ウイルス性腸炎です」の診断で終わることが多いです。

※最近は遺伝子検査も結果が早く出るようになり、検査機関によっては検体を受け付けたその日に速報を出すところもあります。

このような感度の高い遺伝子検査をやっていたおかげで集団食中毒を未然に防いだ好例があります。次です。

集団感染を未然に防いだ事例-山梨県都留市学校給食

山梨県都留市の学校給食センターで学校給食調理員からノロウイルスが検出されました(当時の記事はこちら「給食調理員8人からノロ検出 山梨・都留市」)。

このとき調理員全員が嘔吐、下痢などの症状がありませんでした。

全員症状はありませんでしたが、定期のノロウイルス検査によって感染が分りました。このセンターは自主的にノロウイルスの遺伝子検査を健常な職員に対し定期的に行っていたのです。検査結果を受けて、市は市内すべての小中学校で給食を停止し、児童・生徒に発症はありませんでした。

『ノロウイルスに感染しノロウイルスを排出しているのに症状がない』。この状態を不顕性感染new-window-markといいます。ノロウイルスのもっとも恐ろしい特徴といっても過言ではありません。くわしくは後半で。

この事例は未然にノロの集団感染を防い好例です。ノロウイルス講習会などで専門家により紹介されることもあります。RT-PCR法による定期検査を自主的に行っていたため、普通では分らなかったはずの不顕性感染者を未然に察知することができました。

もし検査をしていなければ、食中毒事件に発展した可能性も十分ありました。というのは、ノロウイルスは非常に感染力が高いからです。

ノロウイルス、感染性胃腸炎はすぐうつる

ノロウイルスはどれくらいうつりやすいのでしょうか?

ノロウイルスに感染した人の便や嘔吐物には非常に多くのノロウイルスが含まれています。具体的には1gあたり10億個以上です。でもなかなか実感がわきません。そこで下の写真を見てください。

赤い部分の量の感染力は?

赤い部分の量の感染力は?

 

このシャーペンの芯の先の赤い部分(2,3mmほど、1μlに相当)、この量の便(または嘔吐物)で何人が感染するでしょうか?

 

答えは、10万人以上です。

あくまで理論値ですが、どれだけノロウイルスの感染力が高いかが分かると思います。

ノロウイルスは空気感染でもうつる!?飛沫感染だけじゃない

ノロウイルスは空気感染するのではないかと以前から指摘されています。

実際、ホテルや結婚式場で感染者の嘔吐したことがきっかけで、その会場にいた広範囲の人たちに感染が拡大したケースがいくつも報告されています。ノロウイルスが飛沫(ひまつ)感染しか起こさないなら、嘔吐を処理した人あるいはその近くの席に座っていた人だけの感染にとどまるはずですが、その翌日にその会場を利用した来場者にも感染者が多く出ているケースもありました。そのような事例から、ノロウイルスは空気感染するのではないかいう意見が出始めています。

では本当に、インフルエンザウイルスのように空気中を漂い、息を吸い込むだけで感染してしまうのでしょうか。

これについては国立感染症研究所の感染症情報センターのホームページ内の「ノロウイルスの感染経路」の記事で見解が示されています。それによると、「ノロウイルスは(中略)空気感染の一種である塵埃感染という経路によって感染が拡大」する可能性があるそうです。

少なくとも、「飛沫感染」と(完全な)「空気感染」の中間的な感染がノロウイルスで起こっているのは間違いなさそうです。

 

ノロウイルスの不顕性感染者

ノロウイルスにかかっているのにまったく症状が出ない人のことを不顕性感染者と呼びます。これがノロウイルスのやっかいな点です。

症状がないのだからノロウイルスにかかっているといっても少量でしょ?そう考えるかもしれませんが、それは間違いです。

驚くべきことに、不顕性感染者は下痢、嘔吐の症状を呈する感染者と同じくらいののノロウイルスを便の中に排出していることが分ってきたのです。具体的には、1gあたり10億個以上排出している不顕性感染者も多いことが分かっています*。

*出典:「ノロウイルスによる食中毒について」 食衛誌Vol.46, No.6, p235-(出典部分:p238)

実はこのようなケースこそ、冬にノロウイルスが大規模に蔓延してしまうもっとも大きな要因なのではないかと考える専門家も多いようです。というのは、下痢、嘔吐など症状があれば当然、周りに広げないように気をつけますが、症状のなければ感染を広げないための対策が手薄になりがちだからです。

 

不顕性感染者の割合について

不顕性感染者の割合はなんと30~50%*と、とても高いことがわかってきました。これは、2~3人に1人はノロにかかっても症状がでないということになります。上記の感染力と合わせて考えると怖い話です。

*出典:「ノロウイルスによる食中毒について」 食衛誌Vol.46, No.6, p235-(出典部分:p237)、「ノロウイルス感染症:最近の研究の展開」モダンメディア 第50巻、6号、p133-(出典部分:p139)

 

ノロウイルスの排出期間

ノロウイルスの排出は長い人だと1ヵ月以上続きます。

 

ノロウイルスの排出期間は長い

ノロウイルスの排出期間は長い

ですので、調理や介護などに携わっている人はリアルタイムRT-PCR法などの感度の高い方法によりウイルスの排出が終わったことを確かめる必要があります。

ノロウイルス対策・予防

手洗、消毒が重要になります。ノロウイルスは主に口から感染するため、食品感染、飛沫感染、手を口元でぬぐうなどの行為から感染します。よって、ノロウイルス対策は、汚染された食品を口にしない、飛沫しやすい環境に身をおかない、口元をぬぐわないことが鉄則になります。

その中で基本となるのが手洗い、消毒です。どちらも感染防止にとても有効な手段です。正しい手洗方法・正しい消毒の知識を身につけましょう。

正しい手洗い方法は以下のとおり、厚生労働省「政府広報オンライン」からパンフレットが出ていますので、印刷して手洗い場などに貼っておくと便利です。

手洗 ノロウイルス

出典:厚生労働省ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/dl/poster25b.pdf

 

ノロウイルスと消毒剤

一般的にはノロウイルスにはアルコールは効かない、塩素じゃないとダメ、と言われています。正確に言うと、アルコール(エタノール)もノロウイルスに効果があるのですが、塩素ほど強力ではありません。そのため、県や国の衛生指導では塩素(次亜塩素酸イオン)消毒が指導されます。

 消毒剤の一覧
消毒剤 ノロウイルスへの効果
エタノール
ハイター、ミルトン(次亜塩素酸イオン)
イソジン(ヨウ素系)
強酸性水(次亜塩素酸)
二酸化塩素

※エタノール系消毒剤にはノロウイルスに対する不活化効果を期待できるものもあります。使用する場合、濃度・用法を守って使用してください。

ほかに効果のある消毒剤としては、強酸性水や二酸化塩素などです。

強酸性水は電解水ともいい、食塩水を電気分解して得られます。塩素系で繰り返し肌を消毒していると荒れてしまいますが強酸性水は荒れにくく、毒性も低いため、調理場や介護施設などで導入が進んでいます。「次亜塩素酸水」という名前で食品添加物としても認可されています。

二酸化塩素は新しい消毒剤で、国内ではこれから安全性評価などが進むと思われますが、将来有用な殺菌剤として注目されています。

ノロウイルスに汚染された調理台や調理器具の消毒方法は?

75%エタノールもノロウイルスに効果のある製品が出てきていますが、まだあまり一般的ではありません。

まず加熱・煮沸できるものであれば、85℃以上で1分以上加熱してください。熱湯をかけるのも手ですが、少しかけて終わりでは完全に消毒できませんのでご注意ください。

調理台やドアノブ、床などの設備には塩素系漂白剤(ハイターなど)が効果があります(ワイドハイターは酸素系漂白剤で塩素系ではないので使えません)。ただ、これらは酸化剤であるため、消毒したい部位が食べ物や有機物で汚れていると有機物に酸化力が先に使われてしまうため、消毒効果が低下します。ですので、消毒の前にあらかじめ十分洗浄してください。その後、塩素濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウムで拭いてください。これによりノロウイルスを失活化できます。

「塩素濃度200ppm」は、500mlのペットボトルにキャップ半量のキッチンハイターを入れて水で満たせば出来上がります。

(市販の家庭用塩素系漂白剤(ハイター、ブリーチなど)の塩素濃度5%です)

※塩素系消毒剤は取り扱いに気をつけてください。失明などの危険性があるため、手袋、マスク、ゴーグルなどをつけて作業してください。使用に当たっては「使用上の注意」を必ず確認してください。また金属の腐食、衣類の腐食に気をつけてください。

嘔吐物にハイターを直接かけてもノロウイルスを不活化できない

ハイターなどの次亜塩素酸ナトリウムは万能と思われがちですが、使い方が大事です。さきほど、「消毒したい部位が食べ物や有機物で汚れていると有機物に酸化力が先に使われてしまう」といいましたが、それは嘔吐物にも言えます。嘔吐物は有機物の塊なので、そこに塩素の消毒力が消費されてしまい、ノロウイルスにまで消毒が届かないという事態になります。

実はこれは雑巾やペーパータオルにも言えます。茶色のペーパータオルを使うと色つきの雑巾を使うと色の脱色に塩素が消費されてしまいます。ですので、嘔吐物を処理した後塩素で消毒するときは、白い雑巾を使ってください。一般的に用いられる材料の中では白い雑巾がもっとも塩素消費を抑えられることが分っています。

服、カーペット、絨毯(じゅうたん)に嘔吐した場合の処理方法。消毒液の作り方。

とてもやっかいなパターンです。捨てることが一番の解決法です。しかし愛着のある服など捨てられない事情もあると思います。

そこで以下の手順を参考にしてみてください。この方法がしっかりとできると、ご家庭でノロ感染者が出ても、家族への二次感染を食い止められる可能性が高くなります。必ず手袋、マスク(必要に応じてゴーグル)を着用して行ってください。手袋は薄手のビニールではなく、厚手のゴム手袋、ラテックス手袋にしてください。薄手のビニール手袋はすぐに破れます。

  1. まずペーパータオルなどで嘔吐箇所を十分拭き取ります。
  2. 次に可能な限り洗います。洗い水の飛散には十分注意してください。服、部分はがし可能なカーペットなどは大き目の丈夫なポリ袋などにいれてもみ洗いしてください。そうすれば飛散を防ぐことができます。大きい絨毯などもみ洗いできない場合はここはスキップします。
  3. ノロウイルスの量は減りましたが、まだたくさん残っています。ここでノロウイルスを完全に不活化するため、大きめの鍋に衣類を入れて煮沸します。鍋に入らなければ、バケツにいれて沸騰したお湯を加えます。これを何回か繰り返します。絨毯などはスチームアイロンを使います。ぬれタオルの上からスチームアイロンを2分当てれば不活化できます。もちろん絨毯の厚みにもよりますので、素材が変色しない程度に長めに当ててください。
  4. 最後は、もし絨毯など大きなものが全体的に汚染してしまい、アイロンでは対応できない場合です。この場合、1000ppm以上(500mlペットボトルにキャップ2杯のハイター)の塩素系消毒液で消毒してください。ただし、変色のリスクが高いですので、実施する場合には十分注意してください。恐れ入りますが責任は負いかねます。

ノロウイルスの薬や特効薬

実はノロウイルスに直接有効な特効薬、処方薬はありません。菌ではないため抗生物質は効きません。免疫低下などによる合併症を防ぐ目的で抗生剤が処方されることはあります。

したがって、医師から処方された薬をしっかりと服用し、体をよく休ませ、ウイルスの排出が収まるのを待つことが一番の療法となります。

ノロウイルス遺伝子検査について

ノロウイルスの検査オンライン申込みこちらからお申し込みいただけます。クレジットカード、コンビニ決済可。弊社は登録衛生検査所として、ノロウイルス遺伝子検査(リアルタイムRT-PCR法)を行っております。弊社に検体が到着した翌営業日に検査終了となります。

検査用途例
・家族がノロにかかった。自分もかかっていないか確かめたい。
・調理場、食品工場、会社などで全員検査を受けたい。
・保育所で定期検査をしたい。

検査が終了すると証明書を発送します。この証明書は調理師の職場復帰、保健所への提出などにお使いいただける公的なものとなります。

※この解説記事は内科医の監修の下、制作しています。
 ご利用・免責について

制作協力:hinokibunko

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