近年ピロリ菌について研究が進み、ピロリ菌と胃がん・胃炎・胃潰瘍との関係が分かってきました。その中でもとくに注目すべきは、ピロリ菌と胃がんとの関係です。このページでは検査会社がピロリ菌の検査・除菌から最近の動向まで解説します。

※この記事は内科医監修の下、作成した解説記事です。

 

 
弊社では便中抗原法によるピロリ菌検査を行っています。
ご自宅にて郵送で検査できます。

お申し込みは『ピロリ菌検査 』からどうぞ。


 

 

胃癌の99%はピロリ菌が原因

胃がんの99%はピロリ菌が原因

出典:一般社団法人 予防医療普及協会

予防医療普及協会は統計データより胃がんのほとんどはピロリ菌が原因で起こっていると発表しました。 

ピロリ菌は胃がんの原因である(「確実な発がん因子」である)

出典:1994年 世界保健機構(WHO)IARC (国際がん研究機関) 報告

WHOもピロリ菌が胃がんの原因と明言し、除菌を進める勧告を行いました。

日本のピロリ菌感染者、3,000万人以上

今でもピロリ菌に感染している日本人は約3,000万人以上いると言われています。

ピロリ菌の検査を行い、陽性と分かったら除菌することで胃癌などのリスクを減らせるため、ピロリ菌検査・除菌する人が増えています。自宅で手軽に検査を受けられるサービスもあります。

ピロリ菌とは?

ピロリ菌の電子顕微鏡写真

ピロリ菌の写真(出典:Wikipedia)

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ、Helicobacter pylori)は4マイクロメートルと小さいバクテリアです。

胃の中は胃酸で満たされています。胃酸は金属も溶かすほどの強酸性であるため、ふつうの細菌は胃酸のため胃の中では生きられません。ピロリ菌は自身の出すウレアーゼで周囲の胃酸を中和して安全地帯を作るため生きていくことができます。

ピロリ菌感染による症状

ピロリ菌はアンモニアを中和して胃にすみつく

ピロリ菌が胃の中で生きていくための戦略

ピロリ菌に感染するとヘリコバクター・ピロリ感染胃炎を発症します。症状がない慢性炎症になる場合も多いです。

感染状態が続くと、胃潰瘍、慢性胃炎、十二指腸潰瘍を発症し、胃の痛み、吐き気、貧血などの自覚症状が起こります(症状が乏しい、症状がない人もいます)。その後、その一部が胃がんに進展します。

年齢や胃炎、萎縮の程度にもよりますが、ピロリ菌に感染した人の3~5%程度が10年後以降に胃がんになるというデータもあります。 

ピロリ菌の潜伏期間

インフルエンザやノロウイルスなら何日程度と潜伏期間が言えますが、ピロリ菌の場合潜伏期間という概念が通用しません。ピロリ菌に感染して症状が進行するのに、何年、何十年とかかるからです。また発症しない場合もあります。

ピロリ菌の世代別感染率

日本人の50代以上は40%程度、40歳代は20%程度、19歳以下で5〜10%前後の人がピロリ菌に感染しています*,**。

ピロリ菌保菌率

ピロリ菌の年代別保菌率

*Expert Rev Gastroenterol Hepatol. 2013 Jan; 7(1): 35-
  **Kamada T. et al., Helicobacter. 2015;20(3):192-

 

高い年齢ほど感染率が高いのは、その世代の人たちが子供のころは不衛生な環境が多く、ピロリ菌に汚染された井戸水などを利用する機会が多かったことが原因の一つと言われています。

19歳以下の若い年代でも10%前後がピロリ菌を持っているので、ご家族のピロリ菌検査でピロリ菌に感染していないか確認するのは、生涯を通しての健康と向き合う上で大切です。

また、陽性基準が引き上げられたピロリ菌検査もあるので、昔陰性でも今の基準だと陽性になるケースも報告されています。再度検査することも場合によっては必要な場合があります。

ピロリ菌の感染経路~ピロリ菌は乳幼児期に感染。大人になったらほとんど感染しない。

ピロリ菌は免疫力がまだ十分でなく、胃酸の分泌も少ない乳幼児期に感染し、その後大人になると免疫力によって感染しなくなると考えられています。

ピロリ菌に感染している親からの口移しやピロリ菌に汚染した水などを摂取して経口的に感染する説が有力です。実際にピロリ菌感染者の歯垢や唾液や糞便からピロリ菌が検出されます

小学生以上になると自身の免疫力によりピロリ菌に感染する可能性はあまりないとされています*。

*一般社団法人 日本臨床内科医会「ピロリ菌感染症」より

ピロリ菌の感染経路については、乳幼児期に口に入れば感染することは分かっていますが、それ以外のことはまだよく分かっていません。ゴキブリ、ハエの媒介、山の水や生水からの感染確率、キスで感染するのか、などこれから研究が明らかになっていきます。

おじいちゃん、おばあちゃんの孫への口移しに要注意。ピロリ菌感染のリスクあり。

硬い食べ物や食べづらい物を自分が口で噛み砕いたり、半分にしたりして子供や孫にあげるのは、つい親心や愛情からしてしまうことかもしれません。しかし口移しはピロリ菌を移してしまうリスクがあると言われています

しかし先ほど示した『ピロリ菌の世代別感染率』グラフのとおり、高齢者ほどピロリ菌感染率が高いので、たとえば60歳以上のおじいちゃん、おばあちゃんが孫に口移しで食べ物をあげた場合、2人に1人はピロリ菌を移している可能性があるとも言えます。

虫歯菌を移してしまうということで最近は子供への口移しはあまりしなくなりましたが、この傾向は結果的にピロリ菌の感染防止にも役立っているはずです。

中学生の集団検診でピロリ菌検査が始まった

ピロリ菌は乳幼児期に感染し、それ以降はほとんど感染しないことから、感染が確定する中学生の集団検診でピロリ菌検査が取り入れられ始めています。目的は、子供たちやその次の世代が将来、胃癌、胃潰瘍などのリスクを予め減らすことにあります。

全国で初めて中学生を対象にピロリ菌検診を始まったのは2013年で、岡山県真庭市です。その後全国で広がり、2019年現在、中学生の集団検診でピロリ菌検診を取り入れている市町村は以下です。

長野県松本市、青森県弘前市、大阪府高槻市、兵庫県篠山市、北海道函館市、三重県松阪市、香川県三豊市、香川県観音寺市、岡山県真庭市、秋田県由利本荘市・にかほ市 他

※上記以外にも多くの自治体が中学生1年生や2年生に対してピロリ菌集団検診をスタートしています。お住まいの自治体が中学生のピロリ菌検診を行っているかどうかは各自治体にご確認ください。

中学生のピロリ菌陽性率は9.3%

篠山市の検査結果では、中学1年生を対象とした検診では陽性率9.3%*でした。

*出典:「胃がんゼロのまち」をめざして!中学生ピロリ菌検診について(篠山市HP)

なぜピロリ菌検査を中学生で行うのですか?

ピロリ菌に感染したかしてないか判断するのに、中学生の年齢が最適な時期だからです。

前述のとおり、ピロリ菌は免疫力の十分でない乳幼児期に、ピロリ菌に感染した親の口移しやピロリ菌に汚染した水を摂取して経口的に感染すると言われています。その後、小学生以上に成長したあとは免疫力によりピロリ菌に感染する可能性はあまりないとされています(※)。

※一般社団法人 日本臨床内科医会「ピロリ菌感染症」より

先進国の中で日本のピロリ菌保菌率は高い。その理由は?

日本人の感染率は先進国の中で高いことが分かっています。

その理由はいくつか考えられますが、現在の高齢者が若いとき、戦後の不衛生な環境で感染を受けたと言われています。

また、日本人には胃がんが多いことが知られていますが、その理由も最近の研究*によって分かってきました。

同じピロリ菌でも、日本などのアジアとヨーロッパのピロリ菌では作られるタンパク質の構造が異なるために発がん性の強さに違いがあるようです。ピロリ菌が作るCagAというタンパク質が人間の胃細胞の中のSHP2という酵素と結合してSHP2が異常となり胃細胞ががん化しますが、東アジアで一般的なピロリ菌のCagAは、ヨーロッパで一般的なCagAより、結合様式の構造上(アミノ酸残基の違いによる立体構造の差異)、がん化への影響が強いことが2017年*に分かったそうです。

*Cell Reports 20 (12), p2876-2890, 2017

ピロリ菌の予防

以下の予防方法が挙げられます。とくに乳幼児期の感染が防げれば、その後は通常の免疫力で感染のリスクは低くなります。とくに乳幼児期の子供がある場合、注意してください。

・親からの食べ物の口移しをしない。

・ピロリ菌に汚染されている可能性のある井戸水を飲ませない、あるいは煮沸して使用する。

・糞便やハエ、ゴキブリなどが食事、飲料水に接触しないようにする。(ピロリ菌をゴキブリに与えるとゴキブリの糞の中からピロリ菌が検出された報告があり、ゴキブリなどがピロリ菌を媒介している説があります)

『ピロリ菌を除菌すると食道がんになる』と聞きました。ほんとうですか?ピロリ菌を除菌して大丈夫ですか?

ピロリ菌除菌により胃が本来の調子を取り戻し、胃酸分泌が活発になることで、食欲が増したり、肥満になったりする、その結果逆流性食道炎になるケースがあるようです。しかし、ピロリ菌と食道がんの直接の関係は示されていません。ピロリ菌がいるなら除菌すべきという医療的コンセンサス(専門家の意見の一致)は変わりません。

大事なのは、単にピロリ菌を除菌すれば胃の問題はすべて解決ということではなく、それぞれに個人差のある胃の調子、その周辺部位の調子を、除菌後もいたわり、必要な検診やケアを続けることです。

ピロリ菌検査の種類

血液や便などで検査します。病院で行う検査、自宅で採って郵送する検査があります。検査ごとに感度、メリットが異なります。

方法 感度
(%)
特異度
(%)
侵襲性 特徴
便中抗原法 90~98 87~100 なし 生菌と死菌を検出する。
培養法 77~94 100 あり 採取箇所以外の感染を見落とす場合がある。
鏡検法 93~99 95~99 あり
迅速ウレアーゼ試験 86~97 86~98 あり
尿素呼気試験 90~100 80~99 なし 禁煙が必要。
血液抗体法 88~96 89~100 あり 採血が必要。
尿中抗体法 89~97 77~95 なし 除菌後は正確な検査ができない。

(表の出典:環境未来WEB「ピロリ菌検査について)

ピロリ菌が陽性だった場合の対応

内科や消化器系の医療機関を受診してください。

以下の疾患・病気がある方は特に除菌が推奨されますが、担当医師の判断に従います。
・胃、十二指腸潰瘍
・胃に発生するリンパ腫など
・萎縮性胃炎
・ポリープ
・早期胃癌に対する内視鏡的粘膜切除術後

陽性判定で胃炎・胃潰瘍・胃の痛みなどの症状がない場合

症状がなくても、医療機関に相談されることをおすすめします。ピロリ菌に感染している場合、慢性活動性胃炎を起こしていると言われており、症状がなくてもピロリ菌陽性であれば慢性胃炎が生じていると考え、除菌治療の適応・保険の適応となります (出典:日本消化器病学会)。流れとしては、まず、胃カメラで検査を受けて胃がん病変などがないか確認し、がんが否定された場合、除菌治療に入ります。がんが見つかった場合、がん治療が始まります。 

ピロリ菌検査が陰性になった場合の注意すべき点

陰性判定でも、胃の調子が悪い、あるいは自覚症状がある場合、医療機関を受診されることをお勧めします。

除菌後陰性になりました。

ピロリ菌除菌後に陰性だとしても、胃がんなどのリスクがゼロになるわけではありません。ピロリ菌がそれまでどれだけ長い期間、胃にダメージを与えたかが重要なファクターと言われています。胃の萎縮や胃がんが発生していないか、内視鏡検査で継続的に検査することが大切です。  

検査の精度、感度について理解し、ピロリ菌陰性になっても、胃がんのリスクはゼロではないことを知った上で検査を受けることが大切です。

※この記事は内科医監修の下、作成したものです。

ピロリ菌検査を受けたい場合(ご自宅にて郵送検査)

弊社では便中抗原法によるピロリ菌検査を行っています。
ご自宅にて郵送で検査できます。

 

 

 

 

 

  

 


 

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