性感染症(STD)検査

性感染症とは

性感染症とは、性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、梅毒及び淋菌感染症など、性的接触を介して感染する可能性がある感染症を指します。
性的接触により、口や性器などの粘膜や皮膚から感染します。
オーラルセックス(口腔性交)やアナルセックス(肛門性交)などでも感染します。

性感染症は、かゆみや痛みのような症状が問題であるだけではなく、感染症の種類によっては、もし治療をしなかった場合、不妊の原因となったり、神経や心臓などに深刻な合併症や後遺障害を残したりすることもあります。また、粘膜が傷つくことにより、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染しやすくなるなど、他の感染症に罹りやすくなることもあります。

特に、生殖年齢にある女性が性感染症に罹患した場合には、母子感染(母親から赤ちゃんへの感染)により、先天性の体の障害の原因となり、放置すると障害が残る可能性もあります。

感染しても、比較的軽い症状にとどまる場合や無症状であることもあるため、治療に結びつかないこともあり、感染した人が気付かないままパートナーに感染させてしまうこともあります。このため、不安に感じたら検査を受けることが大切です。

厚生労働省HPより引用

検査項目について

・クラミジアとは

・淋菌(淋病)とは

・梅毒とは

・HIV・エイズとは

・B型肝炎 C型肝炎とは


検体採取について

検体採取について


クラミジアとは

クラミジア・トラコマチスという細菌によって引き起こされる感染症で、性感染症(STD)の最多原因であり、10~20代後半に多い傾向です。
男女比では女性の方が多く、免疫ができないため、何度も感染する可能性があります。
クラミジアは2週間程度の抗生剤の内服で治療ができます。

感染経路

感染部位の粘膜との接触、分泌物との接触などによる性行為が主な感染経路です。
なお性器だけでなく、性交類似行為により咽頭や目、肺に感染することもあります。
よって、プールや大浴場など間接的な接触では感染することがなく、直接的な接触により感染しますが、クラミジアは感染しても無症状なことが多いため、気付かない間に感染が拡大していく傾向が見られます。
また、妊婦が感染していた場合、出産時に産道で新生児が感染してしまうこともあります。

潜伏期間

感染してから1~3週間程度といわれています。

症状

〈感染初期〉
男性は陰部の軽いかゆみ、不快感、排尿痛などで、女性はおりもの量の増加、陰部の軽いかゆみや腫れ、排尿痛などがあげられます。
これらの症状は男女ともにかなり軽く、ほとんど自覚症状がなく進行していきます。
〈クラミジア発症〉
男性では尿道炎や排尿痛、まれに無精子症等を引き起こします。
女性では子宮頚管炎や子宮内膜炎、不妊症を生じる場合があり、さらに、妊娠中の感染により、流産や子宮外妊娠、骨盤内感染症などのリスクを高めます。
また、母子感染により新生児結膜炎や肺炎を引き起こす可能性もある感染症です。

検査の対象と検査方法

検査の対象・・・男性→尿 女性→膣スワブ
検査方法・・・・リアルタイムPCR法

淋菌(淋病)とは

ナイセリア・ゴノレアという細菌によって引き起こされる感染症で、近年、クラミジアに次いで感染者数が多く認められています。
男女比は女性の方が多く、免疫ができないため、何度も感染する可能性があります。
淋菌は抗菌薬の乱用により、薬が効かないタイプの淋菌も増え、治療が難しくなっています。

感染経路

感染部位の粘膜との接触、分泌物との接触などによる性行為が主な感染経路となります。
なお性器だけでなく、性交類似行為により口腔内や咽頭、目に感染することもあります。
淋菌は温度や湿度に弱い菌であり、粘膜内でしか生息できないので間接的な感染はありません。
しかし、無症状で感染している場合も多く、不特定多数との性的接触などで気付かない間に感染が拡大していく傾向が見られます。
また、妊婦が感染していた場合、出産時に産道で新生児が感染してしまうこともあります。

潜伏期間

感染してから2日~遅くとも10日程度といわれています。
症状はクラミジアに似ているものの、淋菌は感染後比較的すぐに症状が出ることが多いです。

症状

〈感染初期〉
男性では尿道の違和感や痛み、黄白色の膿のような分泌物が出現します。
女性では感染初期に自覚症状が少なく、緑黄色のおりものやおりもの量の増加が認められます。
どちらもはっきりとした症状が出ない為、放置しそのまま進行してしまうケースが多いです。
〈淋菌発症〉
男性では淋菌性尿道炎や精巣上体炎、排尿痛などが起こります。
女性では、淋菌性子宮頚管炎や卵管炎、腹膜炎などを引き起こし、さらに妊娠中の感染により、早産や流産、骨盤内感染症、破水などのリスクを高めます。
また、母子感染により新生児結膜炎や失明、関節炎などを引き起こす可能性があります。

検査の対象と検査方法

検査の対象・・・男性→尿 女性→膣スワブ
検査方法・・・・リアルタイムPCR法

梅毒とは

梅毒トレポネーマという細菌による性感染症であり世界中で広くみられ、一昔前の病気と思われていました。日本では、2011年頃から感染者が急増しており、年代別では、20~50代と幅広い年代で感染が見られますが、特に20代の若い世代の感染者が急増しています。
また、出産時の母から新生児への母子感染による先天性梅毒の感染も増加しています。
全身に様々な症状をきたす為、早めの診断、抗菌薬による治療が必要となります。

感染経路

初期梅毒(Ⅰ期、Ⅱ期…最も感染力が強い)の患者との粘膜の接触を伴う性行為・疑似性行為(肛門、口)が主となります。また、感染した妊婦の胎盤を通じて胎児に感染する母子感染があり早産、死産、奇形などのリスクも高くなります。

潜伏期間

感染してからおおよそ3週間といわれています。個人差による影響が大きく、1週間程度で発症する人もいます。
3週間後、3か月後、3年後、10年後の4期にわたり症状が出たり、消えたりを繰り返し、ゆっくりと進行していきます。
初期症状は2~3週間で自然に消える為、梅毒の発見に気づかずに感染をひろげています。

症状

〈初期梅毒Ⅰ期(3週間~3ヶ月)〉
性器、肛門、唇などの感染部分に痛みを伴わないしこりができます。(軟骨の様な硬さ)
足の付け根のリンパ節の腫れ2~3週間ほどで症状は消えて無症状になります。
〈初期梅毒Ⅱ期(3ヶ月~3年)〉
菌が血液を介して全身に広がり様々な所に発疹(無痛でバラ疹とよばれる特徴的な発疹)がみられ、倦怠感や発熱などの風邪のような症状がでます。Ⅰ期と同様に自然に軽快します。
〈Ⅲ期~Ⅵ期(3年~10年以上)〉
この段階まで進行する事はほとんどありません。皮膚から筋肉や骨へと組織を壊しながら全身に進んでいき最終的には死に至ることもあります。

検査の対象と検査方法

検査の対象・・・血液
検査方法・・・・化学発光酵素免疫測定法

HIV・エイズとは

【HIVとは】
Human Immunodeficiency Virus(ヒト免疫不全ウイルス)の略称です。
HIVは細菌、カビ、ウイルスなどの病原体から守る免疫細胞に感染するウイルスの事です。

【エイズとは】
HIVが免疫細胞に感染することで免疫機能の低下により様々な病気を発症しやすくなります。定められた23の代表的な疾患(日和見感染症)のいずれかを発症した状態をエイズ(AIDS:Acquired Immuno-Deficiency Syndrome)後天性免疫不全症候群と言います。
よって、HIVに感染していても23の疾患を発症しない限りエイズとは言いません。
日本では、性感染症の中でも関心が低く、検査が普及していないため、感染していることに気づかず、AIDSを発症してから気づく事が多くなっています。
感染すると、HIVをなくす事はできませんが、AIDSの発症を遅らせる治療はできます。

感染経路

HIVは血液、精液、膣分泌液、母乳などの体液に多く存在します。
粘膜や傷口に接触する性行為、疑似性行為(肛門、口)による感染が日本では最多となっています。また麻薬などの注射針の使い使いまわし、輸血、医療現場での針刺し事故による血液感染や妊娠時、出産時の母親から新生児への母子感染も感染経路になっています。

潜伏期間

〈感染初期〉
HIVに感染後2~6週間
〈無症候期〉
感染初期症状が消えてから5~10年
※時に短期間でAIDSを発症することもあります。

症状

〈感染初期(急性期)〉
インフルエンザや風邪に似た症状(発熱、咽頭炎、筋肉痛、頭痛、リンパ節腫脹、皮疹)があらわれます。
数週間で症状が消え、感染に気づかないことが多いです。
〈無症候期〉
HIVが体内で増殖しているため、免疫力が弱まりますが特に症状が出ません。
〈AIDS発症〉
様々な病気(日和見感染症)が併発します。
発熱、呼吸困難、下痢、急激な体重減少、神経障害などが続き、数年で死に至ることもあります。

検査の対象と検査方法

検査の対象・・・血液
検査方法・・・・化学発光酵素免疫測定法

B型肝炎 C型肝炎とは

B型肝炎はHBV、C型肝炎HCVというウイルスによって引き起こされる肝臓疾患です。
二つの病気の大きな違いは、C型肝炎はウイルスが体から排除されず、慢性肝炎や肝硬変、肝がんへ進展することが多いです。
他にも、B型肝炎にはワクチン(HBワクチン)があり、乳幼児期の接種で抗体を獲得することができますが、C型肝炎に対するワクチンはありません。その為、他人の血液に触れないことや不特定多数の人との性的接触を避けることなど、個人の注意が予防につながります。

感染経路

小児のB型/C型肝炎の感染経路は、出産時に産道で新生児が感染してしまう母子感染が主です。
成人の感染経路は、感染者の血液や精液などの体液との経皮的接触や、粘膜接触から感染します。
よって、性行為や性交類似行為による粘膜との接触による感染、また、注射器の使い回しや不衛生な使用、安全ではない輸血、刺青、医療暴露などによる血液を介した感染などがあげられます。
B型/C型肝炎ウイルスが空気感染することはありません。

潜伏期間

・B型肝炎・・・1ヵ月~3ヵ月程度といわれています。
・C型肝炎・・・2週間~6ヵ月と、かなり幅があります。

感染初期では、感染者の8割以上が無症状のため、この期間に感染に気付かずに、ウイルスを他者に拡げてしまう可能性があります。

症状

〈急性肝炎〉
全身の倦怠感や悪心、食欲不振や吐き気などを感じ、濃い褐色尿を認めます。
眼球結膜や皮膚の変色(黄疸)が起こり、劇症肝炎を引き起こす場合もあります。
〈慢性肝炎〉
・B型肝炎・・・出生時など母子感染から感染した場合、症状の出ない持続感染に移行します。
一般的に10~30代で一過性の肝炎を発症し、その後非活動性のウイルスに変化しますが、1割程度の割合でこれらが慢性肝炎へと移行し、肝硬変や肝がんを引き起こします。

・C型肝炎・・・急性肝炎へとつながるケースはごく稀で、ウイルスが体から排除されることなく慢性肝炎へと進展します。
慢性肝炎の時点ではほとんど自覚症状がないため、症状が出現し気付いた時には、既に肝硬変や食道静脈瘤、肝がんなど生涯にわたる重篤な症状を引き起こしているということがあります。

検査の対象と検査方法

検査の対象・・・血液
検査方法・・・・化学発光酵素免疫測定法